130p
「学者語源」と「民衆語源」とに分けると、この二つがはっきり弁別されるかのように思われるかもしれない。しかし、科学的な語源研究をする学者も、研究室の外では民衆のひとりである。同じ人間が学者と民衆とを使い分けるのは本来無理なことなので、両者はときに混同する。
学者語源は、正しいか正しくないかのいずれかである。民衆語源は、正・不正を超えた、一つの事実である。「民衆語源」は folketymology の訳である。かつては「民間語源」という訳も行われた。「民衆」「民間」という言葉には、「素人」「程度が低い」「非科学的」という付随的意味が伴い、いささか難がある。わたしは以前から「話者語源」「当事者語源」のような用語に改めることを提唱している。
「学者語源」は、学者と民衆を対立させていて、穏やかではない。むしろ、「科学(的)語源」「学的語源」のような用語にしたほうがいいと考えている。
136p
ドイツ語の辞書で、ベルリンのアカデミ出版から出ている『ドイツ語現代語辞典』には、
日曜 週の第一日で、この日は必ず休む
月曜 週の仕事をする第一日
火曜 週の仕事をする第二日
と、なかなか味な記述をしている。これによれば、月曜日は、曜日の順番としては第二日目であるが、仕事をする日としては第一日目であるということになる。
日曜日に仕事してる親を持つ子供は、この記述を見てどう思うのだろう、と思ったりなど。
- 作者: 柴田武
- 出版社/メーカー: 博文館新社
- 発売日: 1995/07
- メディア: ハードカバー
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る