りつ缶

のんべんだらり

from父

82p

 かつて飾麿はこう言った。
「我々の日常の九〇パーセントは、頭の中で起こっている」


176p

 やがて飾麿も黙り込んだ。彼の瞳は彼岸に揺れる街の明かりを淡々と映した。
 髭面の高藪だけが歌い続けていた。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため
 兄弟わが身と回向して、昼はひとりで遊べども
 日も入りあひのその頃に、地獄の鬼があらはれて
 積みたる塔をおしくづす――」


201p

「脳味噌から指先はどうしてこんなに遠いのかな。動けという信号がどうやっても伝わらない」


太陽の塔 (新潮文庫)

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