326p
(理屈ではない。理屈では、仲成さまのおっしゃったことのほうが正しいような気がする。それでも今は、わたくし自身の得たものを信じよう……)
432p
帝を否定し、皇そのものを否定することが阿高にはできた。彼を倒すことも。自分がその気になれば、帝が何万の兵士で身を守ろうとそれをなしとげることはわかっていた。だが、阿高は帝自身の顔を見、その声を聞くまでわからなかった。乞うことを知らない皇は奪うしかなく、そのために、許されることも知らないのだということを。
これって「ごめんなさい」を教わった稚羽矢に通じるものがあるよね。
442p
(阿高の大事なものになりたかったのだ……)
それが無理な自分だったから、せめて手に手をとって最期の場所へ歩みたかったのだ。苑上が幸せにしてあげたい人がいるとすれば、ほかのだれでもなく、苑上にその力があるといった阿高だった。
455p
苑上はこっそり息をのんだ。阿高のいったことはひどく大事だった。ことによると、一生のあいだ胸におさめておく言葉かもしれなかった。
いつかそういう言葉を聞く日が訪れるんだろうか。
- 作者: 荻原規子,佐竹美保
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/11/18
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (44件) を見る