りつ缶

のんべんだらり

女は誰しも巫女のようなところを持っていると思う。

「これは、魂寄せよ。心からその人を思い、心をこめてその人のことを語れば、影は必ず現れるの」
 藤太たちは顔を見合わせた。たしかに自分たちもよくいっている、『うわさをすれば影』と。それは、まじないでもなんでもないはずだった。しかし、リサトは真剣な面持ちでいった。
「語ることは、呼ぶことよ。その人の現身を誘うのよ。みんなが寄せる思いは一人の思いより大きいわ。だから……ほら、現れる」


薄紅天女 (トクマ・ノベルズ Edge)

薄紅天女 (トクマ・ノベルズ Edge)


192p