りつ缶

のんべんだらり

読み終わったの2週間くらい前だけど

 パッとホロの顔が輝く。
「林檎も?」
「生のものはどうだろうな。そろそろ冬に向けて漬物にされていると思うが」
「……漬物?」
 ホロが怪訝な顔をして聞き返す。北のほうで保存食といえばなんでもかんでも塩だろうから、林檎の塩漬けだとでも思ったのだろう。
「蜂蜜で漬けるんだよ」
 ぴょこん、とホロの頭を覆うフードの形が変わるほどに耳が動く。
「梨の蜂蜜漬けとかもうまいぞ。あとは、そうだな。珍しいが、桃とかもある。それも高級品はあれだ。桃を薄く切って、樽の中にどんどん詰めていくんだが、間にイチジクとアーモンドを時折挟んで樽一杯になったら、その上からたっぷりの蜂蜜を流し込み、最後にショウガを少し入れて漬物にする。食べごろは二ヶ月くらい経ってからだ。一回食べたことがあるが、教会が禁止しようかと協議するくらいに甘くてな……おい、よだれ垂れてるぞ」
 ロレンスの言葉にホロはハッとなって口元を拭う。

狼と香辛料〈2〉 (電撃文庫)

狼と香辛料〈2〉 (電撃文庫)


30〜31p