パッとホロの顔が輝く。
「林檎も?」
「生のものはどうだろうな。そろそろ冬に向けて漬物にされていると思うが」
「……漬物?」
ホロが怪訝な顔をして聞き返す。北のほうで保存食といえばなんでもかんでも塩だろうから、林檎の塩漬けだとでも思ったのだろう。
「蜂蜜で漬けるんだよ」
ぴょこん、とホロの頭を覆うフードの形が変わるほどに耳が動く。
「梨の蜂蜜漬けとかもうまいぞ。あとは、そうだな。珍しいが、桃とかもある。それも高級品はあれだ。桃を薄く切って、樽の中にどんどん詰めていくんだが、間にイチジクとアーモンドを時折挟んで樽一杯になったら、その上からたっぷりの蜂蜜を流し込み、最後にショウガを少し入れて漬物にする。食べごろは二ヶ月くらい経ってからだ。一回食べたことがあるが、教会が禁止しようかと協議するくらいに甘くてな……おい、よだれ垂れてるぞ」
ロレンスの言葉にホロはハッとなって口元を拭う。
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/06
- メディア: 文庫
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30〜31p