りつ缶

のんべんだらり

たぶん真理

90p

食われるなら本望だ。だが、その瞬間をできるだけ先延ばしにしたい。いつまでもいつまでも、聞いていたいから。できるだけ長く、ともに床に上がりたい。兎一兄さんの三味線と揉みあうように、競りあうように、俺の語りが高められていく、そのさきを見たい。


120p

負けられない。負けたくない。ほかのものの芸と比べてではなく、自分のなかにある理想の語り、理想の音に、負けたくなかった。どうせ届きやしないと諦めて、怠惰に流れるような真似はしたくない。銀太夫はその気概を持ちつづけて、いまの芸境に至った。そうありたいと願う健は、全身で銀太夫の声を感受しようと努める。


仏果を得ず

仏果を得ず


おまけ。タイトルの由来と信じてる。277p

金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない。