90p
食われるなら本望だ。だが、その瞬間をできるだけ先延ばしにしたい。いつまでもいつまでも、聞いていたいから。できるだけ長く、ともに床に上がりたい。兎一兄さんの三味線と揉みあうように、競りあうように、俺の語りが高められていく、そのさきを見たい。
120p
負けられない。負けたくない。ほかのものの芸と比べてではなく、自分のなかにある理想の語り、理想の音に、負けたくなかった。どうせ届きやしないと諦めて、怠惰に流れるような真似はしたくない。銀太夫はその気概を持ちつづけて、いまの芸境に至った。そうありたいと願う健は、全身で銀太夫の声を感受しようと努める。
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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おまけ。タイトルの由来と信じてる。277p
金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない。